TWのPC、そしてそのPLの雑談広場。
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葛城・蛹という【人間】が、能力者の力に目覚めたのは、そう遅い事ではなかった。
彼が暮らしていた家は、彼の本当の家じゃない。家族の顔を覚えない内に養子として引き取られ、何も考える事なく平凡に暮らしていた。……彼が、力に目覚めるまでは。
「ぎっちゃん本当に本読むの好きだよね。あたしはそういうの判らないから嫌だけど」
そうそう、そういうあだ名もあった。最も、そう呼んだのは彼女だけだ。
名前は、覚えていない。
笑って、言葉を返したのは覚えている。けれど、その返した言葉は今となっては覚えていない。
その家には魔術やら占星術やら、オカルトな本が多かった。別に伝統あるとかそういうのじゃなくて……住んでる人がそういうのに興味があったから、だけのこと。
「解き放つは炎の術式。我が呼び掛けに応えし者よ、禁忌の扉を越え、我に力を与え給え。
数多に存在する魂達を、完全なる姿に定着させよ。」
軽はずみだった。本棚にある魔術やら何やらの本を漁っていただけなのに。それは、【俺】に魔弾術士としての力を与えた物。
ドカン。ドカン、ドカッ……
何日か後の話だっただろう。ドアを叩く、乱暴な音。まるで突き破ろうとしているかのように大きな音と衝撃が伝わってきた。危ないなあと思いつつも、【俺】をぎっちゃんと呼んだその子が、たどたどしく玄関へと走っていく。
「どなたー?」
開かれた扉の向こうにいたのは、
「あれ…犬?どうしたんだろ」
否。それは、巨大な、黒い蜘蛛。
ゾクリとした寒気を感じ、瞬きする事もできずに、只【俺】はそこに立っていた。犬?違う。それは、蜘蛛じゃないか。
まあ世界結界の力と言った所だ。蜘蛛童は、一般人には犬に見えるのだという。
ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。
心臓が強く鳴り、冷や汗が吹き出してくる。別に恐怖とか、そういう物を感じていたわけじゃない。表現しようのない何かに頭を侵食されているような気がして、その時は何も考えてなかった。
「…ぎっちゃん?どうしたの?」
『巫女様、葛城山ニ帰ロウ』
彼女の声も耳に入らずに、代わりに頭に再生されたのは、そんな声。その時はまだ土蜘蛛の巫女の力は覚醒しておらず、内側に素質が存在しているだけだった。しかし、葛城家の血を受け継いでいるのだからまあ当然といえば当然なのだが……ともあれ、蜘蛛童には【俺】が巫女となるべき人間なのは本能で判ってたようで……
将来仕えさせる巫女を探して、引き寄せられたのかもしれない。幸いというべきか?蜘蛛童には、模様は無かった。つまり、膨や爆に進化していないものだった。
その時、【俺】は本を持っていた。運が良かったか悪かったかは別にして、戦う力がそこにはあった。無意識に、言葉が紡がれていくのが判る。詠唱が終わった後に、蜘蛛童に狙いを定め――その術の名前を呟く。【魔弾術士】という能力者と、【魔導書】という詠唱兵器の姿がそこにあった。
「雷の魔弾」
本がその言葉に反応するかのように光り出し……その意味を知るのに時間はかからなかった。
「……わっ……!」
本から飛び出すように解き放たれた、雷。狙いは定まってないし、一点集中等の精度は今の【それ】と比べると大した事無いものだったが、当時の【俺】達には恐ろしいものだった。
禁忌の魔導書とは良く言ったもので。雷鳴と共に降り注いだその1つの雷は蜘蛛童を消滅させ、家全てを巻き込んでしまい――家は形を無くしてしまった。
「……これ……」
当時には、術力もあまり無かった為魔弾を撃った後すぐに気絶してしまったようだが、目覚めた時には色々と一変していた。目の前には、誰も居なくて何も無かった。勿論、彼女の姿もどこにも無かった。
「○○……?」
彼女の名前をそっと呟いて、状況を冷静に理解した。
まあとりあえず、一般人には理由が判らないものの家が全焼したという事で【俺】は別の場所で暮らす事になった。その後も、惹かれるようにしてやって来た蜘蛛童は全て消滅させた。皮肉な事に、本来崇拝すべき蜘蛛達を【利用】する事によって、魔弾術士としての力の精度が上げられて行った。
でも、そこで暮らす時間もそう長くは無かった。
彼が暮らしていた家は、彼の本当の家じゃない。家族の顔を覚えない内に養子として引き取られ、何も考える事なく平凡に暮らしていた。……彼が、力に目覚めるまでは。
「ぎっちゃん本当に本読むの好きだよね。あたしはそういうの判らないから嫌だけど」
そうそう、そういうあだ名もあった。最も、そう呼んだのは彼女だけだ。
名前は、覚えていない。
笑って、言葉を返したのは覚えている。けれど、その返した言葉は今となっては覚えていない。
その家には魔術やら占星術やら、オカルトな本が多かった。別に伝統あるとかそういうのじゃなくて……住んでる人がそういうのに興味があったから、だけのこと。
「解き放つは炎の術式。我が呼び掛けに応えし者よ、禁忌の扉を越え、我に力を与え給え。
数多に存在する魂達を、完全なる姿に定着させよ。」
軽はずみだった。本棚にある魔術やら何やらの本を漁っていただけなのに。それは、【俺】に魔弾術士としての力を与えた物。
ドカン。ドカン、ドカッ……
何日か後の話だっただろう。ドアを叩く、乱暴な音。まるで突き破ろうとしているかのように大きな音と衝撃が伝わってきた。危ないなあと思いつつも、【俺】をぎっちゃんと呼んだその子が、たどたどしく玄関へと走っていく。
「どなたー?」
開かれた扉の向こうにいたのは、
「あれ…犬?どうしたんだろ」
否。それは、巨大な、黒い蜘蛛。
ゾクリとした寒気を感じ、瞬きする事もできずに、只【俺】はそこに立っていた。犬?違う。それは、蜘蛛じゃないか。
まあ世界結界の力と言った所だ。蜘蛛童は、一般人には犬に見えるのだという。
ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。
心臓が強く鳴り、冷や汗が吹き出してくる。別に恐怖とか、そういう物を感じていたわけじゃない。表現しようのない何かに頭を侵食されているような気がして、その時は何も考えてなかった。
「…ぎっちゃん?どうしたの?」
『巫女様、葛城山ニ帰ロウ』
彼女の声も耳に入らずに、代わりに頭に再生されたのは、そんな声。その時はまだ土蜘蛛の巫女の力は覚醒しておらず、内側に素質が存在しているだけだった。しかし、葛城家の血を受け継いでいるのだからまあ当然といえば当然なのだが……ともあれ、蜘蛛童には【俺】が巫女となるべき人間なのは本能で判ってたようで……
将来仕えさせる巫女を探して、引き寄せられたのかもしれない。幸いというべきか?蜘蛛童には、模様は無かった。つまり、膨や爆に進化していないものだった。
その時、【俺】は本を持っていた。運が良かったか悪かったかは別にして、戦う力がそこにはあった。無意識に、言葉が紡がれていくのが判る。詠唱が終わった後に、蜘蛛童に狙いを定め――その術の名前を呟く。【魔弾術士】という能力者と、【魔導書】という詠唱兵器の姿がそこにあった。
「雷の魔弾」
本がその言葉に反応するかのように光り出し……その意味を知るのに時間はかからなかった。
「……わっ……!」
本から飛び出すように解き放たれた、雷。狙いは定まってないし、一点集中等の精度は今の【それ】と比べると大した事無いものだったが、当時の【俺】達には恐ろしいものだった。
禁忌の魔導書とは良く言ったもので。雷鳴と共に降り注いだその1つの雷は蜘蛛童を消滅させ、家全てを巻き込んでしまい――家は形を無くしてしまった。
「……これ……」
当時には、術力もあまり無かった為魔弾を撃った後すぐに気絶してしまったようだが、目覚めた時には色々と一変していた。目の前には、誰も居なくて何も無かった。勿論、彼女の姿もどこにも無かった。
「○○……?」
彼女の名前をそっと呟いて、状況を冷静に理解した。
まあとりあえず、一般人には理由が判らないものの家が全焼したという事で【俺】は別の場所で暮らす事になった。その後も、惹かれるようにしてやって来た蜘蛛童は全て消滅させた。皮肉な事に、本来崇拝すべき蜘蛛達を【利用】する事によって、魔弾術士としての力の精度が上げられて行った。
でも、そこで暮らす時間もそう長くは無かった。
「葛城・蛹……ですね?」
名前を呼ばれてふと上を見る。刃のついた帽子を被った……鋏角衆。
「将来の巫女である貴方が蜘蛛童を消滅させた罪は重い」
「誰だあんた」
巫女。蜘蛛童。消滅。知らない言葉だ。
「……まだ力に目覚めてないのですね」
は?と相槌をうった【俺】に鋏角衆は土蜘蛛族の全てを語り出した。土蜘蛛族の存在、習性等――それと、巫女の事。葛城家というものが、高位の巫女の一族であるという事。
「で、俺にどうしろって?」
大体言われる事を予想できたが、鋭い目で鋏角衆を睨み付けて問う。その様子に軽くため息を付くと、相手は前と同じ事を繰り返すように言った。
「葛城山にお戻り下さい。罪人とはいえ、今は巫女が必要なのです」
罪。それはきっと、あの蜘蛛を消滅させた事。
「あれが?あれが?あはははっ……!馬鹿馬鹿しいッ、実に馬鹿馬鹿しい」
くつくつと笑うようにして下を向きながら呟く。【俺】にとっての罪は、そんなものじゃない。
【俺】の罪は――
【俺】の罪は――
「『あれが』……!?真実を知らないとはいえ、土蜘蛛様の眷属である蜘蛛童を侮辱するなんて……」
「帰れッ、鬱陶しいんだよッ!!」
両手を前に出して、術式を編みこんでいく。【俺】はもう、その時には魔弾術士の力はそれなりに制御できていた。だから、炎の魔弾を発動する事なんて、容易な事だった。形を成していく炎を見て、相手も一先ず諦めたのか少し後ずさると、
「……気が変わったらいつでもどうぞ」
そう言って、去っていった。息は荒いままだった。溜息をついてから、色々考えている内に【俺】はその日を通り過ぎていた。
鋏角衆が訪れた時から、嫌な事が続いた。
「………っは………!」
毎晩、変な夢を見るようになる。とりあえず、毎日内容は違うけど蜘蛛だけは必ず出てきていた。夢の中で、彼らは何回も何回も頭の中で囁いてくるのである。
『カエロウ』
『ドウシテ ドウシテボクヲコロシタノ』
目覚める度に、体中に激痛が走って、頭を抱えて、息を荒くしながら歯を食い縛って……その繰り返し。一度目覚めるともう寝る気を無くしてしまうのだが、どうも精神が削られてしまうようで……眠らないと体がもたない。
「……熱、あるし……」
もっと日が経つと、悪夢だけに状況は留まらなくなった。体中に寒気が走ったり、頭が重かったり……勿論、悪夢もずっと続いていた。しかも、段々質が悪くなっているのだ。
夢で見たのは……いや、見せられたのは、知らない、舞。それと、何かが蠢き、他人の体の中に取り込まれていく様。この二つを、代わる代わる何回も夢で見た。見る内に、映像を介してその『やり方』を理解していく。
赦しの舞。
祖霊降臨。
それらは、夢を介して無理矢理【俺】に伝えられた。もしかしたら、偶然だったかもしれないけど。精神的に参っていたから起こってしまったのかもしれないけど……【俺】にとっては、【土蜘蛛】が引き起こしている物だと感じられた。
「しつけえな……土蜘蛛サマ……」
苦笑いをしながら、額を覆い、冷や汗を拭う。その時に、ふと頭に言葉が過ぎる。
『……気が向いたらいつでもどうぞ』
手に覆われていた目を見開いて、頭の中で高速で考えを巡らせる。それが進む度に、無意識に表情が変わっていく。これが、きっと、狂気というもの。
「……ふっ、……あははははッ!何が気が向いたらだよ……
どうせ、【俺】がする事なんて決められていたんじゃないか!」
どうせ、【俺】がする事なんて決められていたんじゃないか!」
まるで、土蜘蛛の祖霊に取り憑かれたかのように見た悪夢。
教えられるかのように視た舞と祈祷。
促すかのように出た高熱。
それは、【俺】に土蜘蛛の巫女となる事を強制させる物。
「土蜘蛛サマ……【俺】はそっちには行かないよ……誰かに指図を受けるなんて冗談じゃない」
尚もくつくつ笑いつつも、段々その声に怨念に似た物が混じっていく。
「【 】を寄越すからさ……【 】の事を存分に可愛がってくれよッ!」
迎えに来るかのように現れた蜘蛛童。【私】がする事は、決まっていた。
もう【俺】はこの世に必要無いだろう?
なら【俺】は自分を殺そう。
殺せないなら、せめて眠らせよう。
じゃあな。また会えるなら会おうぜ。
コンニチハ。ハジメマシテ。
【オレ】ハマダンジュツシノカツラギ・サナギ。
【ワタクシ】ハツチグモノミコノカツラギ・サナギ。
ダレモ【オレ】ノコトヲリカイデキナイ
ダレモ【ワタクシ】ノコトヲリカイシテハイケマセン
【オレ】ハチョットネムルヨ
全ての権利を捨てて、【私】は土蜘蛛に全てを尽くしましょう
だって罪人だもの。
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